「いろは歌」の謎に迫る

聖書の言葉をヒントに「生きる喜び」の秘訣を、川柳もどきの「いろは歌」に託して詠んでみました。

信仰歴60年を越え、後期高齢に達したとはいえ、日々未だに理解を深められ続けている聖書。<br />
その言葉をヒントに「生きる喜び」の秘訣を、川柳もどきの「いろは歌」に託して詠んでみました。<br />
「いろは」順に定期的に紹介しますのでお楽しみください

いろは歌
源(もと)を辿れば
謎だらけ

い ろ は に ほ へ と
ち り ぬ る を わ か
よ た れ そ つ ね な
ら む う い の お く
や ま け ふ こ え て
あ さ き ゆ め み し
え ひ も せ す

日本語アルファベット「いろは歌」の謎に迫る
~ 「い」いろは歌 源(もと)を辿れば 謎だらけ ~

長い歴史を持つ「いろは」

ひらがな表記のアルファベット「あいうえお」が使われ始めたのは、明治になってからのことで、それまでは「いろは」でした。「日本が近代国家の仲間入りをするためには、日本語という国語を統一する必要がある」と考えた明治政府の方針を受け、国語学者の大槻文彦が五十音引きの国語辞典「言海」を編纂したことに始まり、1947年(昭和22年)には、文部省著作教科書が「あいうえお」の50音配列を採用したことから、一般社会に根付くようになったと言われています。

福澤諭吉が“風呂場の下足箱でさえ「いろは」順に並んでいるのに、なぜ言葉を「あいうえお」順なんかに並べるのか。不便でしょうがない。”と語っていることからもわかるように、それまでの長い歴史を通じて日本の情緒文化を担ってきたのは「いろは」でした。

作者不詳の「いろは歌」

作者は空海(弘法大師)であるという説もありますが、正確なところは不詳です。七五調四行で美しく詠われていることから推察すると「いろは歌」は、かなりの教養のある人の作であることは間違いありません。

「いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす」(色は匂へど 、散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならん 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ、 酔ひもせず)

この歌の意味するところは「色鮮やかに咲き誇る桜の花でも、散ってしまうというのに、この世で誰が、永久に生きるというのだろうか。この世という険しい山を今日こそ超越して悟りの境地に至り、自己陶酔することも儚い夢を見ることもするまい。」となります。

「いろは歌」の文献

漢字で書かれた「いろは歌」は、仏教の教義を解説した『金光明最勝王経音義』(1079年)に「以呂波耳本へ止千利奴流乎和加餘多連曽津祢那良牟有為能於久耶万計不己衣天阿佐伎喩女美之恵比毛勢須」と記されていることから、仏教の「涅槃経」にある「諸行無常、是正滅法,生滅滅己、寂滅為楽」の意味を日本語に変換し人生の「無常観」を詠ったものであると言われています。

平仮名で書かれた「いろは歌」は、三重県明和町の斎宮跡で発見された4片の皿型の土師器(推定:11世紀末~12世紀前半)に書かれている者です。仮名をひとつも重複させずに歌にして詠んだのですね。その遊び心には驚くばかりです。

歌に託した暗号

「いろは歌」が作られたと考えられている平安時代から鎌倉時代にかけて、興味深い遊びが流行していました。自分の伝えたいメッセージを暗号のように歌に託して伝える遊びでした。現代と違って情緒があったのですね。
一例をあげますと、鎌倉時代の末期の歌人・兼好法師が頓阿法師に送った歌があります。「よもすずし ねざめのかりほ たまくらも まそでも秋に へだてなきかぜ」・・・さあ、皆様はこの歌に読み込まれた暗号を解読できるでしょうか?

  • よもすずし
  • ねざめのかりほ
  • たまくらも
  • まそでも秋に
  • へだてなきかぜ

「よもすずし」の「よ」から始めて縦に読んでみてください、そして「へだてなきかぜ」の「ぜ」から始めて上に上って読んでみてください。「よね(コメ)たまえ、ぜに(銭)も欲し」となります。
この歌を受け取った頓阿法師が返した歌が、「よるもうし ねたく我せこ はては来ず なおざりにだに しばし問いませ」というものでした。頓阿法師の応答の意味がお分かりでしょうか?

  • よるもうし
  • ねたく我せこ
  • たまくらも
  • はては来ず
  • なおざりにだに
  • しばし問いませ

同様に、「よ」から始めて縦に読んでみてください。そして「せ」から始めて上に読んで行ってください。「よね(コメ)はなし、せに(銭)すこし」となります。

「いろは歌」に秘められた謎

このように、当時流行していた遊び心をもって「いろは歌」を見ると、興味深い文章が隠されているということを多くの学者が指摘しています。

  • いろはにほへと
  • ちりぬるをわか
  • よたれそつねな
  • らむうゐのおく
  • やまけふこえて
  • あさきゆめみし
  • ゑひもせす

「いろはにほへと」の「と」から始めて縦に読んでみてください。「とか(咎)なくて死す」となります。
「“咎なくて死す”いろは歌にこめられた遺書」を著した篠原央憲氏は、「いろは歌」は仏教の教えを説くような形をとりながら、実は「怨念の歌」ではないかと推測しています。類まれな天才歌人が、辺地の獄中で死刑囚として死を待ちながら、怨念の歌として暗号で綴った遺書が「いろは歌」であろうというのです。

聖書からの謎解き

しかし、聖書に親しんできた者たちが「咎なくて死す」ということばを聞くと、即座に別の可能性が頭に浮かんできます。この歌は「十字架にかかって私たちの罪のために死んだイエス」のことを詠っているのではないかということです。

 

「いろはにほへと」の「い」から始めて縦に読んでみると、「いちよら(一張羅)やあゑ(ヤーウエ)」となります。「一張羅」とは、人が持っている衣服のなかで、最も良いものという意味ですし、ヤーアエ(ヤハウェ)というのは、自分のことを「私は在りて、在るもの」と啓示された万物の創造者(神)のことです。ここでは作者が、自分にとって一番大切な存在は「ヤハウェの神」であることを詠っているように見えます。

しかも、「いろは歌」の「い」から角の文字三文字を集めると「いゑす(イエス)」となります。
ひょっとして「いろは歌」は仏教の教えを説くような形をとりながら、聖書に親しんでいた作者が、自分を良いもので満たしてくださるイエス・キリストと出会い、イエスに対する自分の信仰を表明したものだったという可能性を否定できません。

「咎のないイエスが 私の罪のために死んでくださった。このお方こそ、私にとって最も大切な神」という思いを歌に込めた ものが「いろは歌」なのかも知れません。興味深い謎に満ちた歌です。