バングラデシュにいるときに、一番困ったのはどんなことですか?

私は1990年から2002年まで、バングラデシュで暮らしていました。その当時、困ったことは何だったかなあ、と思い出してみました。

頭によみがえったのが、準備と覚悟が必要だった「バスでの長距離移動」です!

とても切実な「トイレに、いつ行けるか」問題があったからです。この「トイレ問題」は、どれだけ水を飲めるかに直結しました!!バングラデシュは冬(12~2月)以外、平均気温が30度以上の熱帯モンスーン気候に位置します。日本での猛暑日が毎日のような国で、飲み水の量を制限するなんて、今思えばあり得ませんけれど、あのときは「覚悟」を求められた「バスでの長距離移動」でした。

というのも、当時のバングラデシュの長距離バスには、今の日本の長距離バスのようにトイレはついていませんでした。1996年から99年まで、首都ダッカから当時住んでいた南西部の農村地帯の家に戻るのに、長距離バス、中距離バス、さらにローカルバスに乗り継ぎました。待ち時間を含めると全部で10時間くらいかかります。なかでも難関だったのは、最初に乗る長距離バスがダッカから2時間ほど走った後に並ぶフェリー待ちの車の大行列でした。バングラデシュは、インド北部を通って流れてくるガンジス川河口に位置します。バングラデシュ国内に入ると上流が「ジョムナ河」と呼ばれ、下流が「ポッダ河」と呼ばれます。大河の河口ですから、川向こう岸が見えないくらい川幅が広いのです。バングラデシュ南西部へ行くためには、この川をフェリーで渡らなければなりません(写真)。

首都と南西部を行き来するのに、モノを載せたトラック、そして人は車やバスがごちゃごちゃとフェリーに乗ります。バスがフェリーに乗りこむまで、1時間くらいの待ち時間はざら。列があってもわれ先にと競い合ってフェリーに乗り込むバスやトラック、普通車を上手に隙間なく誘導するベンガル人のフェリーのスタッフたちのワザに、いつも舌を巻いていました。このフェリーにだけ、トイレがありました。10時間の旅で4時間くらい後にトイレに行くのです。でも、一人旅ではその先、中距離バスへの乗り継ぎ時間に荷物を見張ってくれる人がいないから、もうトイレには行けません。この中距離バスに時刻表はなく、満席になるまで出発しない。酷暑でも冷房はない。水が飲みたくてもトイレを考えて、あと2時間、水を飲むのはほんの一口だけ!  こうして、水を飲むことを控えて何とか家にたどりつくと、その晩は決まって、ガンガンとすごい頭痛に悩まされました。今なら、「脱水症状」になって熱中症だったのだと判ります。あのときは、切実な「トイレ問題」だったのです (*_*;

さて、ときは過ぎ、2022年6月末。南西部で30年以上の知り合いの現地団体の代表の女性が久しぶりに、日本にいる私に電話をかけてきました。「ディディ(お姉さん:尊敬した呼称)、ポッダ河の橋がついに完成したよ。私はそこを走るバスに乗って、さっきダッカに着いたの。たった4時間しかかからなかったよ!いつ開通したかって? き・の・う!」

 橋ができた!(写真)

 たった、4時間で首都ダッカと南西部の農村地帯が結ばれたのです。

10時間のトイレ問題を抱えた、あの困難なバスの旅は名実ともに終わりを告げました。彼女からの電話を切った後、私は大きな感慨に包まれました。

「時代が変わったんだあ」と。

 たねこさん、ぜひ、機会があったらバングラデシュを訪問してみてね。あの当時の私のような苦労はもうありませんから、安心して水を飲んで旅を続けてね!

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