人と社会がトータルに変革された「共に喜ぶ世界」を目指す、NGO「声なき者の友」の輪【Friends with the Voiceless International(FVI)】の公式ホームページです。FVIの働きを始め、ビジョンを共有する世界の活動家や働きをご紹介します。

バングラデシュ南西農村地方の地元人道団体「ウットラン」に緊急協力

世界保健機関（WHO）が、予防や医療品が脆弱な途上国の貧困層での新型コロナウィルス感染拡大の懸念を表明した4月半ば、長年親交があるバングラデシュ南西農村地方の地元人道団体「ウットラン」の代表から「Covid-19緊急事態、応援要請」のメールが届きました。バングラデシュでは新型コロナウィルス感染危機による外出規制が3月末に始まったことにより、毎日の日当で生活する貧しい労働者は大打撃を被りました。人口密度が世界有数のバングラデシュの人々の間では感染の知識や予防資源は限定的で、感染抑制は危機的でした。

施設を消毒する村の若者

百万人単位のコロナ感染予防対策

ウットランは地域住民や行政と協力し、ウィルス感染や隔離についての啓発パンフレット、緊急食料支援や衛生品を配布し、地域に簡易手洗い場を設け、殺菌作用がある漂白用パウダ―の配布を始めました。今までの経験を最大限に活かし、県庁保健機関や郡役所と連携し、村ごとの青年ボランティアを組織して地域に根づく活動を進めたそうです。南西部の貧困層だけでも百万人単位という圧倒されるようなコロナ感染予防対策でした。

村の診療所で検診をうける女性

FVIは、日本で暮らす私たちもコロナ対応で大変な中、自分たちのことだけを心配するのでなく、世界の隣人、「声なき者」に思いを馳せて協力する機会を与えられたと考えました。SNSを活用すればあっという間に情報拡散される時代ですが、日本の方々もまた困窮しているという状況を鑑み、不特定多数の呼びかけではなく、既知の方に限定して祈りと応援を要請するメールを送らせていただきました。

緊急の医療、食糧キットを届けるスタッフ

5月半ばまでに合計147万1千円

5月半ばという期限付き支援要請に少人数でも参加していただけたら心強いと思ったのです。ふたを開けると、予想をはるかに超えた多くの個人、グループ、教会から応答と支援が送られてきました。合計147万1千円にもなったのです。自らの不安の中、世界の「声なき者」の痛みを共有しようと祈り、隣人愛の行動に移してくださった少なからぬ日本の方々に大変、励まされ、未来への希望を感じました。

激しいサイクロンで壊滅的な被害を受けた村々にも、医療と食糧キットが届けられた。

5月後半に21年ぶりの猛烈サイクロン上陸

送金直後の5月後半、この地域に21年ぶりの猛烈サイクロンが上陸し、暴風と大雨により多くの人々の家が壊れ、河川の氾濫で田畑が損害を受けました。
支援金で、シャトキラ県の4つの村の最も貧しく緊急対応が必要だった区域の167家族の1か月分の食料、125家族分の感染防止衛生品一式、さらに保健活動をする村や郡レベルの医療・看護関係者に65着の感染防護服と3,250個のマスクや医療用手袋が支給されたとの報告が届きました。

さらに、避難所で感染者が増加しているため、地域医療関係者や住民と連携して今後の必要品を確認し、支給する予定とのことです。

激しいサイクロンで壊滅的な被害を受けた村々にも、医療と食糧キットが届けられた。

現地からの感謝の声

●聴覚と発語が不自由で、シングルマザーとして娘を育ててきたＳさん：
「定期連絡をしてくれるウットラン・スタッフから人との距離を取ることなど感染しない方法を教えてもらい、マスクと消毒液の援助を受けとても安心しました」

●村のドクターの研修を受けて村人の健康相談に乗ってきたＥさん：
「こんな片田舎までウィルスは来ないと思っていたが、5月初め、発熱で咳き込む人が増え始め、村は一変した。防護服もないし、家族も不安がり、診療を中止しようと思ったが、ウットランから防護服があると話が来たので、村人の健康のために村人を診続けることができ、とてもうれしかった」

感染が広がる農村部での診察

世界のどこに暮らしていても「コロナと共に」生きる時代が始まりました。
世界の「声なき一人一人」はかけがえがない「共同体」の一員だと信じ、この隣人の痛みに思いを寄せて蒔いた皆さまの「小さな種」が、やがて素晴らしい木に成長する未来を心から楽しみにして祈り、待ちたいと思います。　（柳沢）

感染が広がる農村部に支援物資を届ける。