世界

FVIとの協力関係の中で、海外パートナー団体が行っているプロジェクトをご紹介します。

007 東ヨーロッパ ウクライナ

チェルノブイリ原発事故を越えて 苦難の歴史から希望を見出した「声なき者」との交流と学び 東ヨーロッパ ウクライナ

2017年報告

ウクライナ危機に応答する「声なき者の友」たち

旧ソ連時代の1986年、現在のウクライナの北部に位置するチェルノブイリ原発が重大事故を起こしてから30年近く経とうとする2014年、ウクライナはロシアによる一方的なクリミア併合、そして東部ではロシアから放送されるロシア化キャンペーンに便乗し、ロシア軍と結託した親ロシア派による内戦が勃発しました。2015年2月、ウクライナとロシアは停戦合意に至ったものの完全には守られず、2018年始めもウクライナ東部では戦闘が散発的に起こり、民間人が安心して暮らすことは困難だというニュースが届いています。

チェルノブイリ原発事故で身体に不調を覚えて人生に転機を見出したボリスさんが、事故の8年後に押し出されて始めた、イエスを信じたユダヤ人とウクライナ人の首都キエフの集会では、自分が東部で暮らすかのように紛争に心を痛めて、負傷した人々、あるいは移住の必要がある人々をサポートしてきました。「声なき者の友」の輪が、日本からその支援に協力した2017年のレポートが届いています。


写真は、戦闘に巻き込まれて負傷して入院中の人のもとにお見舞いに行き、衣服をプレゼントしたもの

長期化する紛争を煽る人々の絶望と希望

旧ソ連に属していた国々は総じて、自殺率が高いことで知られています。ウクライナも例外ではありません。社会は虚無感で深く覆われ、希望を感じられないのです。自暴自棄になり、麻薬に手を染めて中毒になる若者たちが後を絶ちません。現在、紛争地でチャプレンとして人々を励ますビタリさんも、絶望の淵にいた元麻薬中毒患者でした。

彼を家族の一員として迎え入れて更生を手助けしてくれたのが、ボリスさんの集会のメンバーのナディヤさん一家(写真左からビタリさん、ナディヤさんと息子)です。それがきっかけで、15年ほど前、寄付された中古の家で中毒者の更生ハウス運営が始まりました。


麻薬中毒になる若者たちは、自分に絶望しきっています。自分なんかどうなってもいいと思っているとしか感じない社会で紛争が起これば、自分のように社会もめちゃくちゃになればいいと残虐な戦闘員として参加してしまうのです。彼らに忍耐して、寄り添い始めたナディヤさんは、自分のような不完全な人からの労りと人を超越した真実の愛に彼らが触れるとき、自信を少しずつ取り戻した彼らの可能性が芽吹いてくるのを体験しています。

 その中古だった更生ハウスの修理が絶えず必要になり、ついに自分たちで建て替えることになりました。2017年、18年、「声なき者の友」の輪は、その建て替え費用の一部に協力しています。「声なき人々」が迎え入れられ、「声なき者の友」として育てられる新しい建物が入所者自らの手で作られているのです。


希望は、決して失望に終わることがない

絶望した社会を混乱させ続けるために紛争を長期化させ、麻薬中毒の若者や自殺者が蔓延する中で、人間の限界を超えたところで働く希望を見出す。その実践に取り組むボリスさん、ナディヤさん、絶望から希望を見出したビタリさん、そして希望と愛に触れて更生に取り組んでいる若者や中堅の人々。

 21世紀は、紛争地を抱える国々の痛みを共に歩むことが大切なことを知らされます。協力を通して、社会に絶望した人々が見出す希望に触れてつながりたいと願います。引き続き、祈りとご協力をよろしくお願いいたします。