海外でいちばん辛かったのはどんなときですか?
2008年にインドに行ったとき、
4ヶ月間、
ずっとお腹を壊していました。
ずっと体調が悪く、
何度か高熱にうなされました。
それから、血液の中に菌が入って、
皮膚にそれが膿瘍(膿の塊)を
つくるというのを繰り返しました。
多分、食べものや環境中に、
日本にはいない微生物や雑菌がたくさんいて、
それが皮膚の傷や消化管から入り込んで、
清潔な日本の生活に慣れていた僕は、
身体の免疫がそれらの雑菌に負けていたのだと思います。
特に膿瘍は大変で、
4ヶ月間、
足やお尻や背中など、
いつもどこかにポコッと膿瘍ができていて、
座ったりすると激痛が走ります。
田舎には病院がないから我慢したり、
ヨード液を塗るぐらいしかできることがなかったのだけど、
デリーに行くと病院に連れて行ってもらいました。
すると、この菌が脳に入ったりすると、
命に関わることもあるということで、
病院で治療してもらうことになりました。
インドの病院は日本の病院とは違い、
手術室にもスニーカーで出入りしている人がいて、
その横を患者さんが通り過ぎていきます。
5時間ぐらい並んでやっと手術台の上にのせられると、
メスと消毒液で処置するのかと思ったら、
大人5人ぐらいに押さえつけられ、
皮膚の下にできた膿瘍を、
力尽くで潰して膿を書き出し、
どろどろのヨード液をたっぷりかけられ、
それから包帯でぐるぐる巻きにされました。
痛みもすごいものでしたが、
そのときの「いったい何をされるんだ」という恐怖は、
今でもよく覚えています。
それから、エチオピアにいたときも、
辛いことがありました。
インドのときのように身体を壊すことはありませんでしたが、
エチオピアは標高が2500メートルぐらいあるので、
朝と夜はとても寒いのです。
気温は10度前後になるのですが、
建物の壁は薄いし暖房施設がないので、
寝るときも部屋は10度ぐらいで、
羽毛布団などはなく、
重たいわりに暖かくない、
ノミが発生している軍用の毛布のようなものしかありません。
特に標高がさらに高い地域に行くと寒さも厳しく、
震えながら寝て、震えながら目を覚まします。
エチオピアの宿泊施設にはお風呂はなく、
シャワーだけがあり、
そのシャワーも断水していることもあるし、
たとえ水が出たとしても、
電熱式のお湯供給システムは停電で止まっていたり、
そもそも故障して使えなかったりします。
そうすると、冷たい水のシャワーを浴びるしかありません。
標高が高い地域で電熱式のお湯システムが壊れていると、
最初の2日ぐらいはその水シャワーが嫌で我慢しているのですが、
3日目には耐えられなくなり、
水シャワーを浴びるしかなくなります。
そのときの冷たさは、
骨身に染みます。
シャワーを浴びている間もがくがく震え、
でた後にも身体が震えます。
毛布にくるまり暖まろうとしますが、
何時間も震えがとまりません。
そんな土地で誰も知り合いがいなかったりすると、
お腹が減って寒くて孤独、
という三重の苦しみで、
自分がとても弱い小動物のように感じて、
世界でたったひとり取り残されたような気持ちになります。
インドの病院で取り押さえられたときも辛かったですが、
エチオピアの寒さと孤独は、
また別の辛さがありました。
日本に帰ってくると、
衛生的で言葉の通じる病院、
ホテルの暖かな環境とお湯と柔らかい布団、
安心して食べられる暖かい朝ごはん、、、
そういったものが、
まったく当たり前ではなく「ありがたい」と、
思わず口ずさんでしまうほどに感謝が溢れます。
命に関わるような辛さを自分から味わう必要はありませんが、
海外で多少の不便や辛さを味わうと、
住み慣れた日本のありがたさが身に染みるようになります。
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