世界のために役立つために、私たちはこれからどんな勉強をすれば良いですか?

たねこさんは、とても大切なことを考えて勉強に取り組もうとしているのですね。すてきです!

 「どんな勉強をしたら、世界のために役立つのか。」

このことを考えるために、私が大切だと思う2つのことを紹介します。一つは質問の答えとしては真逆のように聞こえますけど、「どんな勉強も世界のために役に立つ」です。ただし、一つだけ条件があります。それは、「世界の役に立つように」と考えて勉強することです。「自分さえよければ」と思って勉強するなら、何に手をつけても世界の役に立つ可能性は小さいでしょう。最悪の場合、世界の害になるかもしれません‼

 もう一つは、自分が勉強して楽しい、もっと深めたいと思える分野を発見することです。世界の役に立つための勉強だと思って必死にやっても、全然楽しくない、なんでこんなことをやっているのだろうと思う分野なら、それは他の人に任せればいいのです。自分が楽しくて、もっと追求したいと思える分野が、世界のためにあなたに任されている分野です。ぜひ、この分野を見つけることに力を注いでくださいね。

 そのうえで、世界の貧しい国々の底辺の人々に30年以上関わってきて、世界のために役立つだろうと思えるいくつかのことを伝えますね。

 一つは「教育」です。世界をより良くするのも悪くするのも、結局は人だからです。いろいろな事を考えて、新しいやり方やものを作り出して未来を変えていくのは、人々の考える力、良い悪いを判断する力、そしてそれぞれの様々な能力がどれだけ伸びたか、にかかっています。私は30年以上前にとても貧しかった国が、少しずつ変わっていくのを見てきました。多くの人たちが食事を十分に取れるようになり、簡単な病気でそれほど死なない社会に変わったのです。それは、多くの人々に自分たちを守る基本の知識を身につけてもらい、さらに能力を伸ばす機会が提供されてきたからだと思います。一人の人のずば抜けた能力ですべての問題が解決できるのでなく、社会全体の底上げ、つまり、すべての人が良い悪いを判断する力を磨き、それぞれの能力を伸ばす機会を作ることが大切なのです。この「教育」はお金を稼ぐ資格を得ることを第一にはしていません。たねこさんが考えたように、「世界に役立つ」ために新しいものを生み出す健全な力を提供するものです。

インド山岳部にて 文字を学ぶ少女

さらに、現代社会はインターネットを通して、本当かうそか判らないような情報が次々に出回る時代です。ですから、人の健全な判断力を社会全体で底上げする「教育」はとても大切です。でも、誰もが自由に選べる社会で、社会に属するすべての人が自分にとって最高を選べるという状況はたぶん、あり得ないでしょう。誰を見落とさないようにするのか、どんな優先順位で、また新しいものの見方を取り入れた健全な思考の力や判断の力を養うという教育は、世界中でまだ始まったばかりかもしれません。もしかすると、様々な人がいて、そのみんなが大切にされる社会での良い悪いを判断する力とその社会に必要な能力を底上げする「新しい教育」のあり方を作る時代なのかもしれません。ワクワクしますね。

 インターネットでつながったように、20世紀後半から世界中がつながるグローバル化が起こりました。21世紀半ばが近づくにつれて、人々はグローバル化の逆方向に揺れ戻りを始め、自分は何者かというアイデンティティ(自分が所属する共同体を確認する思い)が強くなり、特に自国の特別性を強調するナショナリズムがよく聞かれるようになりました。ナショナリズムや特定の所属意識が強くなりすぎると、個人を犠牲にしてもよいと行き過ぎた考えになります。ですから、共同体とは何か、共同体と個人の両方を大切にするあり方、また共同体同士が協力するあり方など多面的な学びが、とても重要になってきます。このような学問には社会学、文化人類学、国際政治学、国際経済など多くの分野が関わっています。

 さらに、人もすべての生き物も大切にするために命の営みを学ぶこと、地球環境の危機が叫ばれる時代に、目を天に上げて地球と共に大宇宙の仕組みの深さを知ることというように、科学全般がさまざまな形で「世界の役に立つ」ものだと私は思います。

 

「世界」に役立つためにまず、自分の強みを発見してくださいね。それは、自分の弱さや足りなさを知ることにもなります。そして、他の人にある「違うもの」の良さを見出してくださいね。様々な他の人の強みと自分の強みとをつなげて協力できると、驚くほど世界に役立つことができるようになります。

最後に、世界で本当に役立つためには、どれほど自分や自分たちに強みがあっても、やっぱり足りないところがあると謙虚に認める姿勢が何よりも欠かせません。自分を高くして他の人を見下す人は、世界で暮らす隣の人も大切にできないことを表していますから。

たねこさん、世界に役立つようにいろいろな勉強を続けてくださいね。健闘をお祈りしています。

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