陣内さんは獣医さんだそうですが、海外のおもしろい動物について教えてください。
ご質問ありがとうございます。
面白い動物を発見したり観察したりするのは、
海外に行くことの大きな楽しみのひとつです。
おもしろい動物はいくつも思いつきますが、
インドの野良牛は印象的でした。
インドでは宗教上の理由で、
牛は神聖な動物とされています。
ですからインドで牛肉を食べることはできません。
マクドナルドに行っても、
メニューにはチキンとビーガンパテ(大豆などで作った肉のようなパテ)しかありません。
豚は牛と逆で、「不浄の動物」、
つまり、けがれた生き物だから、
食べることができないのです。
それなのに、インドにはたくさんの牛がいます。
ふたつの理由があります。
牛の肉を食べることは「神聖な生き物」の肉なので禁止されていますが、
牛の乳、つまり牛乳は「神聖な生き物を通してもたらされる神の恵み」として、
ありがたくいただく文化がインドにはあります。
ちなみにインドカレー屋さんのメニューにある「ラッシー」は、
インドの牛乳で作ったヨーグルトですが、
バラナシという町の道端のラッシー屋さんで飲んだ(食べた?)ラッシーは、
僕が海外で飲んだもののなかで、
一番美味しかったもののひとつです。
牛がインドの町に沢山いるひとつめの理由は牛乳のため。
もうひとつの理由は、
「ただ、そこにいるから」です。
理由なんて、ないのです。
たとえば道端にタンポポが咲いているとして、
「何のために咲いているのか」とは言わないはずです。
秋の夜に満月が空に浮かんでいるのを見て、
「何の目的のために浮かんでいるのか」とは言わないはずです。
インドの人々にとって、
「誰の所有でもない野良牛」が道を歩いていることは、
それぐらい自然なことで、
「何で牛を放置しているのですか?」
という外国人(つまり僕)の質問こそ、
「変な質問をするな、君は」ということになる。
そんなことは考えたことすらなかった、
と友人のインド人に言われて僕は驚きました。
しかしながら野良牛は、
特に都市部では社会問題になっていて、
交通渋滞の原因になったり、
雄牛が子どもを角で突いて殺してしまったり、
という事件が起きたりしています。
それでも、やはり、
牛と共に生きていくのがインドの人たちの凄さです。
日本にいると、
すべてを合理的に考えて、
都市部から野良犬や野良猫の一匹すら残さず駆除し、
人工的な環境に囲まれることに慣れきってしまいますが、
それはそれで、人間として本当に「自然」なことなのだろうか、
と、インドで牛を見るたびに僕は思います。
他にも、インドでは道をゾウが歩いているのを見たことがありますし、
田舎には野生の猿が沢山見られます。
あと、夜道を歩くときは、
野犬を踏みつけて噛まれないように注意しないと、
狂犬病の危険があるので気をつけましょう。
アフリカも本当に美しい生き物がたくさんいます。
色鮮やかな名前も知らない鳥に出会うとハッとしますし、
ハイエナが玄関近くに座っていたこともあります。
野生のリクガメと2時間ほど一緒に過ごしたこともあるし、
エチオピアでは車窓から野生のラクダを見ました。
海外に行くと、
「世界にはこんな考え方の人もいるんだ!」
という文化や人に出会う驚きや喜びもありますが、
「世界にはこんな動物がいるんだ!」
という驚きや喜びもまた、
世界を豊かにしてくれる経験です。
インドの屋台のラッシー、
濃厚で、さわやかで、
本当に美味しいですよ。
本当に、神様からの恵みですね。
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